ノロウイルスとクルーズについて 総括

豪華客船の旅、クルーズファンのためのメルマガ
申し込みは
http://www.melma.com/backnumber_143773/

ノロウイルスとクルーズについて 総括

昨年末、日本でもノロウイルスが猛威をふるい、おおきな話題になりました。その一方でカーニバル・リバティや世界最大の船、フリーダム・オブ・ザ・シーズでのノロの発生が話題になったと思ったら、今年に入って、クイーンエリザベス2で、16%の乗客がノロウイルスに感染しました。冬が去ればノロの脅威から開放されますが、私は昨年4月末の香港−大阪のスタテンダムでノロ騒動にまきこまれましたから油断はなりません。

ノロウイルスに感染すると激しい嘔吐と下痢に悩まされますが1〜3日で快癒し、元気を回復します。よく食中毒と間違われますが、閉鎖空間にノロに感染した人が入ってくると、接触や空気感染で、恐ろしい勢いで感染します。潜伏期間は12時間程度です。ですから一番の早道は患者を隔離することです。

クルーズばかり注目を浴びますが、アメリカでの統計では、レストランでの発症率が一番高く39%、次に保育所が30%で学校が12%です。そしてクルーズの場合10%程度と低いのです。それはクルーズでは今までの経験が生きて、的確な対策を取ることができるからだと思います。

クルーズにはアメリカの政府機関CDCが定めた基準があります。

青:通常の状態で、消毒液を人の手のふれる場所にそなえることです。レストランやブッフェの前には必ず消毒液がおいてあります。
黄:ノロの警告です。消毒液の中の塩素含有量が大幅にひきあげられ、全ての人に消毒が義務づけられます。
赤:ノロの感染への最大級の警告です。人の手の触れるところには最大限の消毒が施され、ブッフェではセルフサービスが中止されます。セルフサービスのコーヒなどの飲み物も係りの人から渡されます。

クルーズ各社ではこのようなCDCの基準より厳しい管理がなされることが多いのです。またアメリカ領海でのクルーズはノロが発生した場合、クルーズの終わった時点でCDCに対して報告しなければなりません。また次の週も感染者が増加するようですと、毎日、しかもアメリカの領海であるか否かにかかわらず報告をするように指導しています。

ノロが発症すると乗組員はただでさえ長い勤務時間がさらに長くなります。飲み水は塩素消毒と煮沸され、乗組員は船のトップから下まであらゆるところを消毒と清掃をします。同時に感染者は部屋の中に隔離されて一歩も外に出ることができません。

ノロの感染が長引くとCDCの係員が乗り込んでさらに厳しい対策が取られます。今年に入って発生したクイーン・エリザベス2がその例でした。またフリーダム・オブ・ザ・シーズの場合はノロが発生したクルーズの次のクルーズでもノロが発症したため、後続のクルーズはキャンセルとなりました。(二日間も船をカラにすればノロは発生しなくなります)

キュナードやプリンセスクルーズでは「ノロ専門の撲滅チーム」を持っています。このように信用を重んじるクルーズラインは万全の措置を取りますが、そうでないクルーズラインもあります。特に就航して間もない新造船は要注意です。プライド・オブ・アメリカにはじめてノロが発生した時の対応はお粗末でした。

外国の船はこのようにノロに対する経験も豊富で対策も慣れていますが、日本の船でノロ騒ぎは聞いたことがありません。今年の冬は大丈夫でしたが、もし発症したら準備は万端でしょうか?



藤原雄一郎のクルーズワールド
http://inox-tabi.com/cruise/cruisetop.htm